【コラム】イベント救護所に適した環境とは?

イベント会場には、年齢や性別を問わず、さまざまな人が訪れます。
そんな中、気分が悪くなった方やケガをした方が、「なにかしらの手当てをしてもらえるのではないか」と期待して訪れる場所が、“救護所”です。
救護所の設置主体は当該イベントの主催者であり、どこに、どのように設けるのかは、基本的に主催者の判断に委ねられています。
経験上、屋外であれば本部テントの一角か、その隣のテントであることが多く、場所によっては近くの建物の一室というところもあります。
救護所が設置されていないイベントも数多くある中で、しっかりと救護所が設けられているイベントは、やはり来場客にとってもスタッフにとっても、大きな安心感につながります。
しかしながら、「救護所を置けば何でもいい」というわけではありません。
救護所とは、“負傷者や急病人の応急処置をおこなうために一時的に設けられる施設”のことであり、そこに訪れる人は、少なくともケガや病気の状態であるわけです。
この記事の目次
救護所に求められる環境
通常、私たちが生活する中で、ケガや病気をした際には、病院やクリニック、診療所などにお世話になるわけですが、その環境をイメージしてみてください。
一言でいえば、「清潔で、明るくて、静かな場所」ではないでしょうか?さらには、冷暖房の効いた快適な空間でもあると思います。
もちろん、特に屋外開催のようなイベント会場において、そのような場所が毎回必ず用意できるわけではありませんが、ケガ人や病人(=傷病者)に対応する場所という意味では、やはり「清潔で、明るくて、静かで、冷暖房の効いた場所」であることが求められます。
(熱中症でフラフラの時に、蒸し暑い救護所で過ごすより、涼しい救護所で過ごしたいですよね。)
そのため、イベント主催者の方には、次のようなポイントを意識して救護所を設けていただければと思います。
※今回のコラムは、救護所に備えておくものではなく、救護所そのものの環境についてのお話です。
イベント救護所の設置に必要なポイント10選
① 屋根と十分なスペースがあること
救護所には、必ず屋根が必要です。
直射日光や降雨を避けられる環境でなければなりません。
そして、少なくとも簡易ベッド1台が置けるだけのスペースと、救護スタッフが活動できるスペースが必要です。
また、可能な限り、受付となるスペースのほか、救護スタッフの待機場所や荷物置き場なども確保しておく必要があります。
さらには、来場者数や季節、イベントの内容や形態により、救護所を訪れる人の数が多くなることが予想される場合は、複数台のベッドを配置したり、救護スタッフも大人数になる事を想定しなければなりません。

② 他の空間と区切られていること
救護所となる場所は、外から見えることのないように、側幕やパーテーションにより四方を囲んでおく必要があります。
受付の入口となる部分は開放しておくことが一般的ですが、少なくともベッドを置く空間については、完全に外から見えないようにしておきましょう。(服を脱がせて冷却処置をしたりなど、プライバシーに十分配慮する必要があるためです。)
また、救護所内にベッドを複数台置く場合は、隣のベッドとの間にもパーテーションがあることが望ましいです。
加えて、テントの場合は、側幕が簡単に取り外せるようにしておくことで、救急隊のストレッチャーがテント内ベッド横まで入りやすくなります。

③ 静かな場所であること
救護所は、しんどい人が休みに来る場所です。
また、苦しくて声を出しづらい方も居れば、聴診器で胸の音を聞いたりもしています。
そんな場所が騒音でうるさければ、患者さんにとってもしんどいばかりか、救護活動にも大きな支障となります。
救護所を設置する場所は、なるべくスピーカー設備やステージなどからは離れた静かな場所を選び、また救護所の近くで人が多く集まったり、音の出る催し物を開催しないなど、周りの音に十分配慮した場所を選定するようにしましょう。

④ 涼しい/暖かい場所であること
暑い日に気分が悪くなって、わざわざ暑いところに行く人はいません。
もちろん、その逆も同じです。
救護所は、そのイベント内のどの場所よりも、「暑い日には涼しく」、「寒い日には暖かく」しておかなければなりません。
理想的なのは、エアコンのある部屋を救護所にしてしまうこと、これが最も望ましい形です。
難しい場合や、屋外イベントでテント式の救護所とする場合は、夏は「スポットクーラー」、冬は「石油ストーブや電気ストーブ」が必須です。
また、その台数についても、空間の広さに見合った台数が必要となり、少なくとも、ベッド1台につき冷暖房器具1基が必要です。
(隣のベッドの人はスポットクーラーで涼んでいるのに、自分のベッドは風もなく暑いまま、というのは誰だって嫌ですよね。)

⑤ 清潔な場所であること
言うまでもなく、救護所は清潔でなければなりません。
ただ、屋外イベントでテント式の救護所の場合など、必ずしも清潔な環境を確保することが難しいことは往々にしてあります。
しかし、そうした場合であっても、なるべく「水たまりにならない場所を選ぶ」や、「排水溝の上は避ける」など、少しでも衛生環境が悪くない場所を選定するようにしましょう。
また、テント式以外にも、プレハブやコンテナ式の救護所など、その場に合った設備を選択することも必要でしょう。

⑥ 室内が明るいこと
救護所では、ケガをした部分を観察したり、手当をしたり、傷病者の顔色を見たりと、明るくなければならない状況が数多くあります。
テント式救護所を設置する場合で、イベント開催時間の一部でも、夕方から夜間にかけての「暗くなる時間~暗い時間」に被る場合は、必ず蛍光灯などの照明設備を設置し、十分な明るさを確保しましょう。

⑦ トイレの近くであること
救護所に訪れる人の中には、下痢や腹痛など、トイレを利用する必要がある方も多くいらっしゃいます。
また、気分が悪くてフラフラしている状況でも、人間である以上は尿意や便意を催します。
そうした状況のときに、トイレの場所まで距離があると、本人にとっては果てしなく遠い道のりに思えるものです。
また、本人にとっても救護スタッフにとっても、水で手が洗えるということは、衛生管理上非常に重要なことです。
会場のレイアウトによる部分もありますが、なるべく救護所はトイレの近くに設けることが望ましいでしょう。

⑧ 目立つ場所であること/案内掲示があること
救護所に来る方は、焦ったり戸惑っている状況が考えられるほか、傷病者を発見した他の来場者や警備員などが、その状況を知らせに救護所に来てくれることも多くあります。
そうした方にすぐに救護所を見つけてもらえるように、なるべく会場内で目立つ場所に位置していることが望ましいです。
ここでいう“目立つ場所”とは、メインステージの横などという意味ではなく、例えば「会場入口から入ってすぐ、メインステージまで向かう導線上」や、「屋台やトイレに行く導線上」など、来場者が「あ、ここに救護所があるんだな」と自然と目について覚えておける場所という意味です。
もしも目立たない場所に設置する際は、救護所への案内看板を設置したり、会場案内図やパンフレットに位置を記載するなど、来場者がすぐに見つけられるように工夫しておきましょう。
また、救護所の入口には、救護所であることが分かる看板を大きく設置するとともに、「救護所」の文字だけではなく、「Aid Station」などの英語表記と、ピクトグラムも併記することで、外国人などさまざまな人種・国籍の方にも配慮することが望ましいでしょう。

⑨ 救急車の停車場所に近いこと
大きなイベントになればなるほど、会場の広さは広くなり、車が入れる道路や通路からは離れていきます。
しかし、例えば音楽フェスのような会場で急病人が発生し、救急車を要請した場合、会場のど真ん中まで救急車が入ってくることは現実的に不可能です。
一般的に、救急車は会場に最も近い道路上に停車し、救急隊員がストレッチャーを転がしながら徒歩で現場に向かいますが、この導線上に人混みや柵などがあると、搬送までにとても時間がかかってしまいます。
救護所は、なるべく救急車の停車位置に近い場所か、救急隊が会場の中を通らずに裏側から回り込んでアクセスできる位置に設けるなど、救急搬送導線を意識したレイアウトが望ましいでしょう。
また、その導線上に階段があるとストレッチャーが使えないため、なるべく階段の無い導線を確保しましょう。

⑩ (複数設置する場合は)駆けつけにかかる距離を基にすること
イベントの規模や会場の広さによっては、救護所を2か所以上設けることが考えられます。
その場合、救護所の配置については、救護所間の直線距離を均等に配置するのではなく、実際に救護所から現場に駆けつける場合の歩行ルートとかかる時間を考慮して、各救護所の配置を検討しましょう。
例えば、音楽フェスのA会場とB会場が隣り合わせであっても、両者の間に通過できない柵や壁がある場合。こうした場合は、A会場側に救護所があり、現場がすぐ目の前のB会場内であっても、救護スタッフはぐるっと遠回りをせざるを得ず、駆けつけに時間がかかります。
そのような会場レイアウトであれば、図面上は直線距離が近くとも、B会場側にも救護所が必要となります。
反対に、A会場とB会場が通り抜け出来るのであれば、両会場への駆けつけ距離が同等になる位置に、1つの救護所を置くことで対応できる場合もあります。

たかが救護所?されど救護所
いかがでしたでしょうか。
救護所とは、「置いておけばいいもの」ではなく、本来は「その会場の中で最も快適な空間」でなければならない場所なのです。
イベントの開催時、来場者の安全を確保することは、主催者の重大な義務であり責任です。
多数の来場者が見込まれるイベントや、スポーツイベントなど、ケガや病気の発生が予見される場合、規模やリスクに応じた救護体制(救護所の設置や救護スタッフの配置など)を整える必要があります。
これらを怠り、事態を悪化させてしまった場合、主催者には安全配慮義務違反や注意義務違反などが問われ、損害賠償請求につながる恐れもあります。
しかしながら、イベント救護は、「テントを置いて、看護師1人を雇って配置するだけ」では、必ずしも十分な体制とは言えないというのが、これまでの経験上の率直な意見です。
日本国内には、有償無償を問わず、様々なイベント救護会社やボランティア団体が数多く存在しています。
イベント救護という特殊な業務に関しては、やはりそうしたその道のプロに依頼することが最も安全で安心できる選択肢でしょう。
当会は神戸市内及びその周辺市町村であれば、原則として無償でイベント救護活動を実施しているボランティア団体です。
救護所の設置場所の検討、救護体制の検討など、実施設計の段階からご相談に乗ることも可能ですので、「救護所を設置しよう」と思ったその時は、ぜひ当会へご依頼ください。

