【コラム】イベント救護=看護師 は正しい?

この記事を特に読んでほしい方
・イベントの主催者や立案者、受託者、計画策定の担当者などで、「救護体制についても考えなくては」と思っておられる方
・救護体制を作るうえで、「とりあえず看護師を雇えばいいかな」というイメージをお持ちの方
イベントを開催するにあたり、応急救護体制の確保は、主催者に課せられた重大な責任の一つであることは言うまでもありません。
しかし、応急救護体制を確保するといっても、果たしてどうすればいいのか、よくわからない事も多いですよね。
そのため、とりあえず看護師を雇えばいいという発想になるのも当然のことです。
しかし、実はその“とりあえず看護師を”という対応は、間違いではないものの、必ずしも十分な対応とは言えない部分があります。
そこで今回は、【イベント救護の特殊性】と、【応急救護体制の作り方】について解説します。
イベント救護の特殊性
私たちが普段生活している中で、“医療の専門家”として真っ先に頭に浮かぶのは、おおよそ「お医者さん」か「看護師さん」でしょう。
そして、イベント主催者の立場から見れば、「お医者さんに来てもらうのは高そう」というイメージがあり、一方で、「看護師さんならお医者さんより安いだろう」というイメージがあるのではないでしょうか。
実際に、お医者さんに来てもらう場合は1時間あたり1万円程度の予算が必要で、看護師さんであればお医者さんよりは安いことが大半です。
「じゃあ、看護師を雇おう」「とりあえず一人いればいいかな」となるのは当然の発想なのですが…
ここからが重要なポイントです。
イベント救護と言っても、そのイベントの内容は多種多様です。
例えば、運動会やスポーツ大会、お神輿、お祭り、食フェス、音楽フェス、マラソン大会や花火大会、登山体験や農業体験など、数えればキリがないほどのイベントが全国各地で開かれており、その形態や規模はまさに様々。
そして、形態や規模が様々であるからこそ、起こり得る事故や傷病もいろいろなものが考えられます。

| スポーツ系 | 打撲、擦過傷、捻挫、骨折、脱臼などの外傷、溺水、過呼吸など |
| 屋台・食フェス系 | 喉詰め、誤嚥などの事故、熱傷などの外傷、食中毒、急性アルコール中毒など |
| 音楽フェス系 | 将棋倒しや転倒等の事故、過呼吸など |
| 神事・神輿系 | 打撲、擦過傷、捻挫、骨折、脱臼、熱傷などの外傷、過呼吸など |
| すべてに共通 | 熱中症、持病の悪化、急性心筋梗塞や脳卒中等、心肺停止など |
さらに、これらの発生する状況は、人ごみの中や音響が鳴り響く中など、必ずしも静かで安全な環境とは限らず、なによりも、“医療設備の整っていない場所”で、“突然発生”します。
そうした「環境の特殊性」も、イベント救護の特徴のひとつです。
看護師=万能 ではない
看護師と言うと、漠然と「医療のスペシャリストで、何でも出来るようなイメージ」をお持ちの方も多いと思いますが、実際には、“何でもできる”という訳ではありません。
もちろん医療のスペシャリストであることに変わりはありませんが、平たく言えば、看護師にも“専門分野”があり、それぞれに得意分野が分かれています。

例えば、調理師免許を持っている人の中でも、和食料理人もいればフレンチ料理人もいますし、教員免許を持っていると言っても、数学教師もいれば体育教師もいますよね。
それと同じように、看護師免許を持っていても、「循環器内科の病棟で働く看護師」、「整形外科の外来で働く看護師」、「救急救命センターで働く看護師」、「手術室で働く看護師」、「美容クリニックで働く看護師」、「献血ルームで働く看護師」など、他にも様々な領域・分野に分かれています。
なぜこんなにたくさんの種類に分かれているのかと言うと、医療の分野は非常に幅広いだけでなく、非常に奥が深いことから、「広く浅い知識」よりも「狭く深い知識」が求められることが多いためです。
看護師の働く世界は、それだけ難しい世界だということですね。
病院との違い
また、世の中には看護師免許をお持ちの方はたくさんおられますが、その大多数は、いつもは病院等の医療機関でお勤めの方々です。
病院やクリニックなどは、明るく清潔で、医療設備が整った、まさに「人を救うために特化した場所」。
しかし、イベント救護の現場は、それとは相反する状況であることが通常です。

“人も物資も設備も、必要なものは何でもある”という病院やクリニックに対し、“人も物資も設備も限られ、今あるもので出来る限りのことをする”というイベント救護の現場では、助ける側に求められるスキルは異なります。
加えて、病院では医師の指示下で医療行為をおこなうことができますが、イベント救護の現場では基本的に医師は居ないことから、看護師であっても点滴や酸素投与などの医療行為は出来ず、一次救命処置と応急手当しかおこなえません。
つまり、出来ることは、医療資格のない一般人と何ら変わらないということです。
それも、限られた条件の下、自分の専門外の傷病にも対応しなければならない状況に置かれることになります。
イベント救護スタッフに求められるもの
以上のような点をまとめると、「看護師だからイベント救護が出来る」という考え方は、必ずしも正しいとは言えません。
とはいえ、人を救うことに対する正義感や使命感から、「やらないといけない状況なら、どんな状況でもやる」のが医療者というもの。
しかし、イベント救護のような特殊な環境で、どのような傷病者にも対応しなければならない状況に対し、誰もがやったことがあるかと言えばそうではなく、看護師なら誰でも出来るかと言えばそうではありません。
イベント救護の対応は、イメージとしては消防の「救急隊」の活動に近いと思っていただけるとわかりやすく、実際には、さらにその救急隊が来るよりも前の段階で、どのような傷病に対しても初動対応するのがイベント救護の役割です。
看護師の分野で言えば「救急外来」に近いものはありますが、具体的には病院ではない環境の「病院前救護」と呼ばれる分野であり、看護師でそれを日ごろから専門におこなっているのは、ドクターヘリやドクターカーで働く看護師や、民間救急会社の看護師ぐらいのもの。
何度も言いますが、看護師だからといって、なんでも出来るわけではないのです。

「とりあえず看護師」よりも、イベント救護の専門組織へ
では、イベントの応急救護体制の確保はどうすればいいのかと言うと、世の中には「イベント救護を専門におこなう組織」というものが存在します。
多くは民間救急会社が事業の一つとしてイベント救護も請け負っていることが多いほか、当会のようにイベント救護を専門としたボランティア団体というのも各地にいくつかあるようです。
両者には有料か無料かという違いはあるものの、イベント救護を専門におこなっている組織には、やはりそれなりの経験と知識があり、イベント救護という特殊な環境における救護活動に慣れたスタッフが対応します。
これまでのイメージだけで「要件:看護師1名」と書くのではなく、今後はぜひ、イベント救護はイベント救護に特化した組織にご依頼ください。

※当会では看護師を指定することはできません
私たち「みなとまち救護班 ANCHOR」も、イベント救護に特化したボランティア組織です。
メンバーの中には、看護師や救急救命士などの医療資格を持つ者も複数います。
ただし、本業を持つ中でのボランティア活動という事情から、必ず看護師に来てほしいというご要望にはお応えできません。(結果的に、出務者の中に看護師が含まれる場合ももちろんあります。)
ただ、当会では豊富なイベント救護の経験を持つメンバーに加え、メンバー全員(看護師も、そうでない者も含む)に対してイベント救護に特化した研修をおこなうことで、看護師等の医療有資格者でなくとも、しっかりとした救護活動がおこなえる体制を整えています。
どうぞご安心いただき、お任せいただければと思います。
私たちは、イベント救護という特殊な環境に特化した組織として、皆様のイベント開催をサポートいたします。
ご依頼はホームページのご依頼フォームからご連絡ください。

